平和堂のサステナビリティ / サステナビリティ情報

TCFD提言への対応

気候変動関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、以下TCFD)とは、気候変動が金融市場に重大な影響をもたらすとの認識が主要国の間で広がったことを背景に、各国の中央銀行・金融当局や国際機関が参加する金融安定理事会(Financial Stability Board、FSB)が2015年に設立したタスクフォースです。企業が、気候変動がもたらす「リスク」と「機会」の財務的影響を把握、開示することで、投資家による適切な評価を可能とし、正しい資本配分と金融市場の効率化、持続可能で安定した経済を目指しています。

平和堂は、人々の生活と社会に貢献する企業として、気候変動を経営における重要課題の一つととらえています。そのため、TCFDが推奨する取り組みを推進し、組織運営における4つの中核的要素「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の情報を順次開示していきます。

ガバナンス

社長を委員長とし、各本部長、各部会長からなるサステナビリティ委員会において、気候変動を含むサステナビリティ全体の課題や方針について検討しています。同委員会は、原則、年2回開催しています。

取締役会では、同委員会から、気候変動を含むサステナビリティ課題全般に関する報告を受け、方針等の検討を行っています。なお、2021年12月に気候変動の観点を含む「サステナビリティ・ビジョン」およびサステナビリティに関する重要課題とアクションを策定し、取締役会において承認を得ました。

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サステナビリティ推進体制図

リスク管理

気候変動が経営に及ぼすリスク及び機会の評価については、全社的なリスク管理プロセスに統合し、社長を委員長とする内部統制委員会が統括しており、同委員会で決定した方針を毎年、取締役会で承認し、方針に基づいて各部署がリスク低減のための施策を実行し、同委員会に報告しています。

また、特に、店舗における風雪水害・感染症などについては、BCPの一環として、管理本部長を委員長とし、関係部署部長からなる防災対策委員会が統括しています。同委員会で検討・決定した方針・計画に基づいて各部署が対策を実行しています。

戦略

シナリオ分析

目的
2021年、気候変動によるリスクおよび機会を認識し、現在の対策を検証することで、将来の事業戦略へと活かすことを目的に、シナリオ分析を実施。定性的に評価し、重要なリスクと機会を特定しました。分析においては、2℃未満(1.5℃を含む)および4℃シナリオを採用し、異なる気象条件・社会環境における事業活動を検討することで、さまざまな環境下においても持続的な経営を可能にすることを目指しています。
特定した重要なリスクと機会に関して財務インパクトの算定を行い、定量的な評価を行いました。
対象範囲
株式会社平和堂の本部および店舗(全156店)
時間軸
現在~2050年
シナリオ
分析においては、以下のシナリオを参照しました。
  • ・IEA WEO 2023 NZE(1.5℃)、SPS及びAPS(2℃)
  • ・IPCC第6次評価報告書 SSP1-1.9(1.5℃)、SSP1-2.6(2℃)、SSP5-8.5(4℃)
    ※IPCC第5次評価報告書のRCP2.6はSSP1-2.6、RCP8.5はSSP5-8.5にそれぞれ該当
気候関連の政策が強化されなかった場合、気温は4℃上昇すると予想されます。(4℃シナリオの世界)

影響規制などの移行リスクは小さいものの、自然災害の悪化が進行し、異常気象などの物理的リスクが高まると予想されます。

気候関連の政策が強化された場合、気温は1.5℃~2℃上昇にとどまると予想されます。(2℃未満シナリオの世界)

影響移行リスクが大きくなり、4℃シナリオと比較して物理的リスクは限定的になると予想されます。

4℃シナリオでは、現状の政策が延長されることで規制などの移行リスクの影響は小さいものの、自然災害の悪化が進行し、異常気象などの物理的リスクが高まると予想されています。2℃未満シナリオでは、GHG排出規制など気候関連の政策が強化されることで移行リスクの影響が大きくなり、その効果として4℃シナリオと比較して物理的リスクは限定的になると予想されます。

世界平均地上気温の変化

注:1850年~1900年平均からの変化
出典:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約」
※SSP・・・気候変動を引き起こす影響の度合い(放射強制力)に、社会経済発展の傾向の仮定を組み合わせて、将来の気候変動を予測したシナリオ

重要なリスクと機会

4℃シナリオにおいては、物理リスクの増大により、店舗運営などにおいて損害を被るリスクがより大きいと予想されます。一方、2℃未満シナリオにおいては、カーボン・プライシングの導入をはじめとする気候関連政策の強化や、消費者行動の変容、低炭素技術の普及など、社会が脱炭素へ移行することに伴うリスクや機会の影響が大きいと予想されます。また、物理的リスクの発生は4℃シナリオに比べて小さいものの被害は発生する見込みです。具体的なリスクと機会の要因及びそれに伴う事業への影響(事業インパクト)、さらにリスクを最小化し、機会を最大化するための対応策は以下の通りです。

重要なリスク・機会 事業インパクト 主な対応策
2℃未満シナリオ 4℃シナリオ
移行リスク・機会 政策・規制 カーボン・プライシングの導入 カーボン・プライシング導入により燃料や電力使用に伴う費用負担が増加 追加的なカーボン・プライシング導入はなく、費用の増加は生じない見込み
  • 省エネルギーの推進
    ・店舗の計画更新および改装時の省エネ設備導入
    ・設備運用の見直し(空調及び冷蔵・冷凍設備の温度適正化など)
  • 再生可能エネルギー導入促進
カーボン・プライシング導入が物流コスト(外部委託費)にも影響 追加的なカーボン・プライシング導入はなく、費用の増加は生じない見込み
  • 物流効率の改善
    ・店舗オペレーション見直し
    ・積載効率の改善
    ・他社との共同配送の推進
  • 委託先選定基準の検討
プラスチック規制の強化 再生プラスチックに関する規制が強化され、再生材料使用などの対応コストが上昇 追加的なプラスチック規制の導入はなく、費用の増加は生じない見込み
  • 平和堂こだわりブランド商品のプラスチック包材削減
  • 生鮮品のプラスチック容器の軽量化
  • 衣料品の陳列改善によるハンガー使用量の削減
  • プラスチック回収・再生の拡大
業界・市場・評判 消費者行動の変化 サステナブルなライフスタイルの定着により消費者の環境意識が向上。低GHG排出商品の品ぞろえが少ない場合は売上が減少
【機会】ニーズに対応することで売上が増加
カーボンニュートラルに向けた機運が高まらず、消費者行動に大きな変化が生じないことを想定
  • 低GHG排出商品の取り扱い品数増加
  • 低GHG排出商品販売戦略・顧客訴求の強化
技術 低炭素エネルギー技術の普及 省エネ技術や再エネ技術の導入が進まず、エネルギーコストが増加
【機会】ニーズに対応することでエネルギーコスト削減。また、EV普及に伴い店舗での充電提供による集客の増加
低炭素エネルギー技術の普及が進まないことを想定
  • 省エネルギーの推進及び再生可能エネルギーの導入促進
  • 店舗へのEV充電設備の設置推進
物理的リスク・機会 急性 異常気象の激甚化(豪雨や暴風、台風)、それに伴う洪水など 豪雨や暴風、台風など自然災害の増加に伴い、店舗の休業や営業時間短縮などが増加し、売上が減少
【機会】BCP対応による事業レジリエンスの強化
豪雨や暴風、台風など自然災害が+1.5℃~2℃シナリオよりも増加するため、店舗の休業や営業時間短縮などが増加し、売上がさらに減少
  • 店舗被災時の早期復旧体制の確立
  • 防災施策の強化
慢性 一部の農産物や海産物の収穫量が減少し、仕入れ価格が上昇 一部の農産物や海産物の収穫量が+1.5℃~2℃シナリオよりも減少し、仕入れ価格がさらに上昇
  • 仕入れ先の分散化による安定調達の強化

財務影響については、気候変動シナリオ等に基づき、項目別に試算を実施しました。その内、影響が大きいと予測されるカーボン・プライシングについては、以下の通り試算しました。
試算にあたっては、IEAの予測を参考にしており、2030年時点のカーボン・プライシングは140ドル/t-CO2と設定しています。
2030年においても対応策を実施せず、2022年度と同程度のCO2を排出すると想定した場合のカーボン・プライシングは、26.4億円となります。
各対応策などを実施し、2030年度のCO2排出量を46%削減(2013年度比)することで、財務インパクトへの影響を抑制していきます。

項目 2030年財務インパクト
カーボン・プライシング (ガソリン・重油等使用、冷媒によるフロン類の漏洩) 5.7億円
(電気使用) 20.7億円
  • ・使用パラメーター:IEA「World Energy Outlook2023」のNZEシナリオより、140ドル/t-CO2
  • ・為替レート:1ドル=150円で計算
  • ・CO2排出量は単体。

指標と目標

平和堂が取り組む気候変動に関連する具体的な指標及び目標は、以下の通りです。
この目標は、2021年に策定した「サステナビリティ・ビジョン」の一部を構成するものとして、重要課題に位置づけています。
全社をあげて課題意識を持ち、削減に取り組んでいきます。

目標

  基準 2022年度実績 2030年度目標
CO2排出量の削減 ※1 2013年度CO2排出量
228,765t/CO2
168,926t/CO2
26.2%削減
2013年度比
46%削減

※1 CO2排出量については、GHGプロトコルに沿って、Scope1・2を平和堂グループで算出。

  基準 2023年度実績 2030年度目標
プラスチック廃棄物の削減 店内加工の食品トレー使用量 ※2 2020年度使用量
原単位
使用量1,891.5t
原単位14.8kg/百万円
2020年度比
17.5%削減
2020年度比
25%削減
店内加工の食品リサイクルトレー使用比率 年間使用率 使用量704.4t/
使用率37.2%
40%使用
平和堂こだわりブランド「E-WA!」容器包装のプラスチック使用量 ※3 2020年度使用量
原単位
154.0t
原単位45.6kg/百万円
2020年度比
10.3%削減
※ペットボトル除く
2020年度比
20%削減
  • ※2 トレー使用量は、生鮮部門の売上高を原単位として使用。
  • ※3 「E-WA!」の対象商品で算出し、売上高を原単位として使用。

Scope別GHG排出量実績

2022年度のScope1・2(株式会社平和堂、連結子会社)の排出量は、Scope1が35,050t-CO2、Scope2が133,876-CO2でした。Scope3(株式会社平和堂のサプライチェーン)の排出量は1,865,128t-CO2で、Scope1・2・3全体でのGHG総排出量は、2,034,054t-CO2となります。

排出量内訳
  • Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
  • Scope2:他者から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出
  • Scope3:Scope1・2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他者の排出)
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